ポリスルホン膜で透析治療の質を向上させる方法!合成高分子系透析膜の特徴や効果、使用上の注意について紹介

透析
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透析治療とは、腎不全の患者さんに腎臓の働きを代替する治療で、血液中の老廃物や不要な水分を除去することで、生命を維持します。透析治療には様々な種類がありますが、その中でも最も一般的なものが血液透析です。
血液透析では、透析器と呼ばれる機器に血液を通して濾過をしますが、その際に重要な役割を果たすのが透析膜です。透析膜は血液と透析液との間に張られる半透膜で、老廃物や水分を選択的に移動させます。しかし、すべての透析膜が同じ性能や特徴を持っているわけではありません。実は、透析膜にはセルロース系膜や合成高分子系膜という大きく2つの種類がありますし、その中でもさらに細かく分類されます。例えば合成高分子系膜ではポリスルホン(polysulfone:PS)膜やポリメチルメタクリレート(Polymethyl methacrylate:PMMA)膜などがあります。それぞれどんな特徴や効果があるのでしょうか?またどんな患者さんに適しているのでしょうか?
このブログ記事では、主にPS膜について詳しく解説していきたいと思います

まずは透析治療の目的と原理から!!

透析治療の目的と原理について説明します。透析治療とは、腎臓の機能が低下した場合に、その機能を代替する治療のことです。透析治療には血液透析と腹膜透析の2つの方法がありますが、ここでは血液透析について説明します。
血液透析の基本原理は「拡散」と「限外濾過」です。拡散とは、溶質(老廃物や電解質など)が高濃度から低濃度へ移動する現象です。限外濾過とは、水分や溶質が圧力差によって血液側から透析液側に移動する現象です。
拡散では、血液中の老廃物や電解質が透析膜を通して透析液へ移動します。これにより、血液中の老廃物や電解質の量を調整し、pHも維持します。
限外濾過では、血圧やポンプ圧などで作られた圧力差によって水分や溶質が透析膜から移動されます。これにより、血液中の余分な水分や老廃物を除去します。

ドイリー
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ここから、PS膜の紹介!!

PS膜の特徴や利点を各社別にご紹介!!

PS膜は合成高分子系の透析膜の一種で、セルロース系膜に比べて生体適合性が高く、血液との相性が良いとされています。PS膜は中空糸型で、細孔径が大きく、水分や老廃物を効率的に除去できます。また、耐久性が高く、長期間使用しても機能低下が少ないという利点もあります。そのため透析治療の現場では多くのPS膜が使用されております。

旭化成メディカルのPS膜の特徴

  • 高い除去性能、低Albロス
  • C3a・WBC・PLTの軽微な変化
  • 良好な残血性

高い除去性能、低Albロス

旭化成メディカルのPS膜は緻密層が厚いことが特徴の一つです。緻密層の厚みが増すと平均孔径を大きくしてもアルブミンの透過性が抑制されるため、β2マイクログロブリンとアルブミンの選択分離性能が向上している。

C3a・WBC・PLTの軽微な変化、良好な残血性

透析膜に含まれるポリビニルピロリドン(PVP)が湿潤すると透析膜の内側表面に水和層が形成され、その結果として血液が透析膜に触れることで起こる補体(C3a)、白血球(WBC)、血小板(PLT)への刺激が少ないとされています。また、旭化成メディカルのPS膜はWetタイプの為使用前から水和層が形成されてるため抗血栓性(血小板付着抑制など)が高く残血が少なくなっています。

旭化成メディカルのPS膜の種類

  • APSシリーズ(ダイアライザー)
  • ABHシリーズ(ヘモダイアフィルター)

東レ・メディカルのPS膜の特徴

  • 中空糸内側に親水性ポリマーを形成

親水性ポリマー(NVポリマー)により高い血小板付着抑制

東レメディカルのPS膜は、中空糸膜の内側にNVポリマーと言われる親水性ポリマーをナノオーダーで配置しており、血小板付着抑制効果を持たせています。

東レ・メディカルのPS膜の種類

  • NVシリーズ(ダイアライザー)
  • NVFシリーズ(ヘモダイアフィルター)

透析治療で使用されるPS膜のシェア

ダイアライザーの材質別シェアは、合成高分子系膜が約90%を占めており、その中でもPS膜が最も多く使用されています。セルロース系膜は約10%以下となっています。
以上から、国内の透析膜の材質別シェアは、PS膜が最も多く(約50~60%)、PES膜やPEPA膜も一定の割合(約30~40%)を占めていると推測されます。セルロース系膜は少数派です(約10%以下)。

PS膜の使用上の注意!!

PSは合成高分子系の透析膜としては比較的安全で、セルロース系膜に比べてアレルギー反応や血圧低下などの副作用が少ないとされています。しかし、完全に副作用がないというわけではありません。PS膜には親水化剤としてポリビニルピロリドン(PVP)が含まれており、これが原因で血圧低下や発疹などの重篤な副作用が生じる可能性があります。また、PS膜は疎水性であるため、血液中のタンパク質や脂質と吸着しやすく、これが透析効率を低下させたり残血につながります。
したがって、はじめてPS膜を使用する場合は、治療開始直後の血圧や体調の変化に注意が必要です。また残血がある場合はヘパリンなどの抗凝固剤の見直しやそれでも改善が見られない場合は他の膜材質を検討する必要があります。

親水剤とは

親水化剤とは、水になじみやすくするために添加される物質のことです。透析膜には、疎水性の合成高分子系膜(PS膜やPES膜など)に親水化剤が含まれているものと、親水性のセルロース系膜(CTA膜など)に親水化剤が含まれていないものがあります。
PVP以外の親水化剤としては、ビスフェノールAやグリセリンなどがあります。しかし、これらの物質もアレルギー反応や血液凝固異常などの副作用を引き起こす可能性があります。また、親水化剤が含まれていないセルロース系膜も、製造過程で残留したエチレンオキシドやグリセリンなどが原因で副作用を起こすことがあります。
したがって、透析膜に含まれる親水化剤は一概に安全とは言えません。透析治療を受ける際には、患者さんに合った透析膜を選択することが重要です。

ドイリー
ドイリー

市販されている透析膜の中にはPVPを含まない合成高分子膜もあり、疎水性の特徴を生かしエンドトキシンの吸着特性があります。

ポリビニルピロリドン(PVP)とは

PVPによる副作用の頻度は、透析治療においては明確に報告されているものは少ないようです。透析治療以外でPVPを用いた場合でも副作用は少ないとされていますが、それでも約1%程度の患者さんに血圧低下や発疹などのアナフィラキシー反応が起こることがあります。また、PVPを含む透析膜を使用した場合にも、血圧低下や発疹などのアナフィラキシー反応が報告されています。
したがって、PVPによる副作用は稀ではありますが、ゼロではありません。特にアレルギー体質の方や免疫力の低下した方は注意が必要です。副作用が起こった場合は速やかに医師や看護師に連絡してください。

ドイリー
ドイリー

PVPそのものは人や環境に対して安全性が高く、消毒薬のポピドンヨードの原料、医薬品の添加物や化粧品原料に用いられています。 また、その他にはスティック糊や、ヘ アスタイリング剤の原料として私たちの身近なものに使われています。

PS膜以外の透析膜との比較や使い分けを述べる

透析膜を選択する方法は、患者さんの症状や目的に応じて異なります。一般的には、以下のようなポイントを考慮して選択します。

透析膜の材質:セルロース系膜は補体活性化が少なく、血液凝固異常やアレルギー反応が起こりにくいですが、中分子物質の除去率が低いです。合成高分子系膜は中分子物質の除去率が高く、β2ミクログロブリンやサイトカインなどの炎症性物質を減らすことができますが、補体活性化やアレルギー反応が起こりやすいです。
透析膜の孔径:孔径が大きいほど、小分子物質だけでなく中分子物質も除去できます。しかし、孔径が大きすぎるとアルブミンなどの必要なタンパク質も失われる可能性があります。また、孔径が大きいと血液凝固異常や感染症のリスクも高まります。
透析膜の表面積:表面積が大きいほど、透析効率や溶質移動率が高まります。しかし、表面積が大きすぎると血液凝固異常やアレルギー反応のリスクも高まります。

以上のように、透析膜にはそれぞれメリットとデメリットがあります。患者さんに合った透析膜を選択するためには、医師や看護師と相談しながら患者さんの状態を把握し、目標値や副作用を考慮することが必要です。

透析膜の使い分けを説明した記事はこちら

透析膜による副作用

透析膜による副作用を防ぐ方法は、以下のようなものがあります。

透析前に体重や血圧を測定し、適切なドライウェイト(DW)と透析液の組成を設定することで、低血圧や気分不快などを防ぐことができます。
透析中に抗凝固剤(ヘパリン)を使用することで、血液凝固異常やダイアライザー内の血栓形成を防ぐことができます。ただし、ヘパリンに対するアレルギー反応や出血傾向がある場合は注意が必要です。
透析膜の材質や孔径に合わせて抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)やステロイド剤(プレドニン)を使用することで、アナフィラキシーショックや発疹などのアレルギー反応を防ぐことができます。
透析器や回路の滅菌・消毒を徹底することで、感染症や敗血症などの微生物由来の合併症を防ぐことができます。

以上のように、透析膜による副作用は予防可能なものが多いです。しかし、万一副作用が起こった場合はすぐに医師や看護師に知らせて対処してもらう必要があります。

まとめ

PS膜の特徴まとめ

  • 生体適合性が高い
  • 加工が容易でシャープな除去特性で除去効率が高い
  • 機械的強度が高い
  • 透析治療では材質別シェアNo.1

PS膜は、透析治療において高い尿毒素除去性能と生体適合性を持つ合成高分子系の透析膜です。PS膜には、各社が独自に開発した様々な特徴を持つ製品がありますので、患者さんの症状やニーズに応じて適切なものを選択することが大切です。PS膜には、一部の患者さんにアレルギー反応を引き起こす可能性があることも報告されていますので、使用上の注意も必要です。

このブログ記事では、透析治療で使用されるPS膜の特徴や効果、使用上の注意について紹介しました。透析治療は、患者さんの生活の質(QOL)に大きく影響するものです。PS膜は、透析治療の質を向上させるための有効な選択肢の一つです。PS膜に関する最新の情報や研究成果をチェックして、患者さんに合った透析治療を受けることができるようにしましょう。

コメント

  1. […] […]

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