シャントを長持ちさせるには?
シャントトラブルにはどんなものがあるの?
透析患者さんにとってシャントは非常に重要なものです。シャント管理を行いシャントトラブルを減らすことは「透析患者さんのシャントが長持ちする」につながります。
透析患者さんのシャントの管理についてはこちら
私は透析技士として今まで多くの患者さんのシャントを診てきました。また臨床検査技師さんと一緒になってシャント管理に励んでまいりました。私の詳しいご紹介はこちら。
この記事では代表的なシャントトラブルをご説明します。この記事を読んで明日から患者さんのシャントを注意深く見てみてください。
全身的な合併症
- 心エコー検査を行い心機能の評価
- 過大シャント、シャントの過剰血流の評価
シャントを作成することで血液循環に変化が起こり発生する合併症です。心臓に対する負担が増えることで心の機能が低下すること原因です。
シャントは動脈血の一部を静脈に流しこむので、通常ではありえない循環動態を作り出すことで心拍出量が増大し心負担が大きくなります(シャント肢の末梢の血管の抵抗が低下するため)。また大量の血液が心臓に戻ることにより更に心負担が増えます。
心負担による心機能低下に注意が必要です。
狭窄・閉塞
- 見た目で狭窄部位を判断(視診)
- シャント音で狭窄部位を判断(聴診)
- 触ってスリムの変化や血管の怒張で判断する(触診)
- シャントエコーを行い、上腕動脈の血流量やRIにより評価
シャントに起こるもっとも多い合併症が狭窄と閉塞です。
シャントで狭窄や閉塞が起こる一番多い部位はシャントの吻合部です。動脈と静脈をつなぐことで動脈から勢いよく静脈に血液が流れ込むことで、この勢いに抵抗するために静脈壁が厚くなり、それが狭窄になりしだいに閉塞になります。
つぎに狭窄・閉塞が起こりやすい部位は、穿刺部位の静脈壁です。繰り返し穿刺を行うことで血管壁が厚くなり、その部位がしだいに狭窄・閉塞していきます。
また、穿刺ミスにより出血・血腫・炎症から狭窄・閉塞が起こることあります。
人工血管では静脈と人工血管の吻合部で狭窄・閉塞が起こりやすいです。狭窄・閉塞が起こる理由は血液が勢いよく流れ込むことで、人工血管の内径は5~6㎜と自己血管よりも太いため流れる血液の量も多く勢いも強いため狭窄・閉塞は起きやすいと言えます。
シャント狭窄・閉塞の治療としては経皮的血管形成術(PTA)が一般的です。
静脈高血圧症
- シャント肢と非シャント肢を比べてみる
- 透析中の静脈圧上昇
- 血管の怒張
- シャントエコーによりフローやRI
静脈高血圧症の原因は、シャント吻合部から中枢側に狭窄があり血液がうまく流れないことで起こります。血液がうまく流れず血液が停滞することで末梢側が腫れてきます。狭窄の場所により指・手のひら・腕全体が腫れる場合があります。
ソア・サム症候群
- 手先の腫れぼったさ
手首にシャントを作ることで、シャント肢の親指側に血液が多く流れて手先に発赤や腫れぼったくなったりします。親指(thumbソア)がひりひり腫れる(soreソア)という意味でソア・サム症候群と呼ばれます。シャント吻合部より中枢側の狭窄が原因で起こります。
スチール症候群
- 手先の冷感
- チアノーゼ
- 痛み
シャント吻合部を作ることで末梢に流れるはずの血液が減ることで虚血性変化(手先が冷たい・痛みがあるなど)が生じる状態のこと言います。肘部や人工血管でシャントを作成したときに起こりやすく、シャント吻合部が大きいと起こりやすいと言えます。
実際は吻合部の大きさだけでなく、動脈の狭窄や閉塞による供給血液の低下、末梢循環不全、心機能低下など血液量の低下によってもスチール症候群は起こります。
患者さんが手先の冷たさや痛みを訴えていたら、スチール症候群を疑ってみてください。
動脈瘤
- 急激に大きくなる動脈瘤は手術適応となります。
- 破裂の危険や感染があれば手術で除去することも検討する。
シャント吻合部にできる「吻合部動脈瘤」と穿刺による「穿刺部動脈瘤」があります。本来は動脈にできる瘤のことを指すのですが、シャント血管の場合はシャント静脈にできる瘤も「シャント動脈瘤」と呼びます。血管壁の構造を保ったままの「真性動脈瘤」と血管の構造が消失している「仮性動脈瘤」とがあります。
急速に発達するシャント動脈瘤や、瘤が青紫色だったり、感染徴候があれば外科的除去が必要になります。
血清腫
血腫は血管から漏れた血清成分によってできる腫瘍のことです。多くは人工血管の吻合部にできます。見た目は血管瘤と区別がしにくく、超音波エコーで診断し、血管を圧迫したり感染を起こすようなら切除していきます。
感染
- シャント肢の発赤・熱感・痛み
シャント感染は、皮膚の発赤・熱感・痛みが特徴で、患者さんのシャント肢の観察が重要です。
穿刺時の清潔操作はもちろんのこと、普段からシャント肢を清潔に保つように患者さんに自身に説明することも重要です。
透析患者さんの免疫機能に関する記事はこちら
血管痛
- 穿刺によるものか
- 血管のよる痛みなのか
- 腫れていはいないか
- 穿刺針がしっかり血管の中に入っているか
- 穿刺針が血管にあたっていないか
透析治療での血管痛は、穿刺の血管損傷や穿刺針の位置によることが多いと思います。それ以外にも透析終盤に患者さんが血管痛を訴える場合、心理的要因の考慮も必要です。
穿刺による痛みの場合、血管の中に穿刺針がうまく入っていなかったり、血管の壁にあたっている場合が多いと思います。穿刺針から血液がひけるか、穿刺針の位置を変えてみて痛みの変化を確認してください。
血管損傷による血管痛の場合、出血や腫脹の確認、透析後半になると除水により血管が細くなるため痛みがでることがあります。その場合も穿刺位置の穿刺針の向きなどを変更します。
また、温めたり、冷やしたりすることも効果的です。
今回の記事は以上となります。最後まで読んでいただきありがとうございます。
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