透析室において感染症対策は非常に重要です。【なぜなら透析患者さんは感染症になりやすく重症化しやすいから】
透析室において感染症対策は非常に重要です。
透析治療は、①透析患者さんが感染のリスクが高い(易感染性)、②血液を体外に導いて治療するという治療法の特性、③多数の患者を大きな透析室内で集団で治療を行うという治療環境などから、院内感染を起こしやすい医療であると言えます。
また、透析患者さんの死亡原因の第2位が感染症であり、年々増加傾向であることからもわかるように透析室にとって感染対策は非常に重要です。
透析患者は感染症になりやすい(易感染)理由
透析患者さんは免疫不全状態であり、易感染であると言えます。その原因としては、①免疫機能のの低下、②MIA症候群、③原疾患や透析治療で感染の機会が増えたことが原因になります。
1.免疫機能の低下
透析患者さんは好中球やマクロファージなどの機能が低下していると言われています。それに加えて樹状細胞の数や機能が低下しているため、細菌などの侵入に対してリンパ球がうまく反応しないことがあります。樹状細胞の機能低下にはβ2MGも関与していると言われています。
また透析患者さんは慢性炎症になることが多く、それにより常に白血球が刺激されている状態(慢性的な自然免疫刺激)です。そのため体の中に細菌やウイルスが入ってきたときに、白血球がうまく機能しない(低反応)を示します。
好中球やマクロファージは細菌やウイルスを食べて排除する役割をします。
樹状細胞は、免疫系にとって司令塔のような役割をします。樹状細胞が細菌やウイルスの特徴を他の免疫細胞に伝えることで免疫機能が働きます。
2.MIA症候群
栄養障害・動脈硬化・炎症は、お互いに関係し相乗的に症状を悪化させていることをMIA症候群と言います。
栄養障害により蛋白質やエネルギーが十分に取れていないと免疫機能が低下します。またビタミンや亜鉛などの欠乏も免疫機能が低下します。
蛋白質やエネルギーが不足すると、感染症リスクの増加や胸腺の萎縮、末梢リンパ組織の消耗が起こり、特に細胞性免疫の機能が低下します。
透析患者さんの栄養状態(サルコペニア・フレイル)に関する記事はこちら
3.原疾患や透析治療そのもの
透析患者の原疾患の第一位は糖尿病です。糖尿病そのものが免疫機能を低下させます。
また、透析治療は週3回の治療の時に針を刺したり、多くの患者さんと同時に治療するという特徴から、透析治療そのものが感染しやすいと言えます。
特に透析治療を行うたびに針を刺すシャント肢の感染症には注意が必要です。
シャントトラブルに関する記事はこちら
このような理由により透析患者さんは免疫力が低下しており感染症になりやすいと言えます。
糖尿病と感染症の関係
インスリン治療ができる以前の糖尿病患者さんの60%は感染症で亡くなっていました。その後インスリンと抗菌薬の開発で糖尿病患者さんの感染症は減少しましたが、今だに糖尿病患者さんの感染症は高頻度でみられます。
現在、透析患者さんの原疾患の多くは糖尿病から腎不全になる方が多く、2019年には41.6%の方が糖尿病から透析導入になっています。
なぜ糖尿病の方は感染症になりやすいのか?【原因は高血糖になると免疫能が低下するから】
糖尿病患者さんは、インスリンがうまく分泌できないため、高血糖になります。この高血糖が免疫機能に悪影響を与えます。
高血糖と免疫機能低下の負のループ
高血糖により免疫機能が低下します。
- 白血球(好中球)の機能低下
- 好中球の遊走性低下
- 血管内皮への接着作用低下
- 貪食作用低下
- 殺菌作用低下
- オプソニン化低下
- 免疫反応の低下
- 血流の悪化
- 神経障害
オプソニン化とは、細菌やウイルスに抗体や補体がくっついて、貪食作用しやすくする作用のことです。
一方、感染症になると…
- 炎症性サイトカイン上昇
- 種々のストレスホルモンの分泌上昇(グルカゴン、コルチゾル、カテコールアミン、成長ホルモンなど)
これにより…
- 全身各組織における脂質分解や蛋白分解と肝臓における糖新生の誘導
- 各組織における糖の取り込み低下
などにより、血糖値が上昇しやすくなります。
”血糖値が上昇すると免疫能が低下して感染症になりやすくなり、感染症になると炎症反応がおこり高血糖を引き起こす”という負のループが起こります。
まとめ
透析患者さんは、糖尿病をはじめ栄養障害などを併発していることが多く、免疫力が低下しやすい病態といえます。また、それに加えて透析治療そのものが免疫機能にあたえる影響は多いと思います。
そのため、透析患者さんの免疫力は低下しており、透析医学会の報告でもあるように透析患者さんは感染症で亡くなる方が多く、日ごろから感染症に気を付けなければなりません。
今回の記事は以上となります。最後まで読んでいただきありがとうございます。
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