世界第3位の透析大国日本の透析医療の現状をわかりやすく説明します。【患者さんの特徴と治療の特徴を海外と比較】

透析
スポンサーリンク
Pocket

世界的にみても日本の透析患者さんの人数は多く、透析人数は世界第3位になります(1位アメリカ49.6万人、2位中国46.5万人)。そんな透析大国の日本の透析医療を諸外国の透析医療との違いを含めてご紹介します。

日本の透析患者さんの身体的特徴

  • 高齢化
  • 長期化による高齢化の増進
  • 糖尿病性腎症の増加
  • 合併症の併発

日本の透析患者さんの特徴として”高齢化”・”糖尿病性腎症”・”長期化・それに伴う合併症の併発”が上げれます。

高齢化

日本の透析患者さんの平均年齢は年々上昇していき現在は69.09歳となり、ここ30年で平均年齢が約15歳上昇しています。
現在、日本の透析患者さんは33万人いますが、その約半数が70歳以上になります。
良好な治療成績をほこる日本ですが導入後120日以内の死亡率は欧米諸国と変わらない結果となっています。透析を導入する年齢も年々上昇しおり、80歳以上の導入患者さんの1年死亡率は30.2%との報告もあります。

ドイリー
ドイリー

透析導入時の年齢、eGFR、心房細動の有無、心不全の有無、リンパ腫の有無、悪性腫瘍の有無、入院歴の有無をスコアして、導入後6か月の死亡率を予測する研究も行われています。

高齢化の問題点

  • 身体機能の低下
  • 無気力・活動量の低下
  • 独居
  • 合併症が多い
  • 認知症

高齢透析患者さんの対応についての記事はこちら

高齢化が進む透析医療において透析看護の在り方

糖尿病性腎症

腎不全になる理由(導入原疾患)は糖尿病が第一位で39.1%です。多くの患者さんが糖尿病から腎不全になり、透析治療を開始しています。
糖尿病の患者さんは全国で328.9万人(2017年時点)おり、糖尿病は国民病となっていることは皆さんもご存知かと思います。
生活習慣病から糖尿病になり、そこから腎不全なる方が多いのが現在の透析医療の特徴です。そのため厚生労働省でも糖尿病から透析にならないように医療計画が進められています。

糖尿病の問題点

糖尿病の合併症

  • 神経障害
  • 網膜症
  • 動脈硬化(心筋梗塞、脳梗塞)
  • 免疫力低下

透析患者さんに関する免疫力低下に関する記事はこちらです。

透析患者さんの免疫力低下の原因【免疫力低下には糖尿病が深く関わっています】

長期化

透析技術の発展に伴い、透析患者さんが長生きできるようになりました。それにともない透析患者の高齢化も進んできました。
日本の透析患者さんの1年生存率は90%以上、アメリカ80%、ヨーロッパでは85%、死亡危険率は日本を1とするとアメリカは2.4、ヨーロッパが2.8となり、日本の透析治療成績が良いことがわかります。

ドイリー
ドイリー

透析技術の発展により透析患者さんは長生きできるようになりました。透析が長期化することが透析患者さんの高齢化の要因の一つと思われます。

長期化の問題点

透析治療が長期になると、高齢化が進み合併症の発生頻度もあがります。
腎不全では、体内に尿毒素が蓄積し、蓄積した尿毒素を透析治療で除去しますが、4時間/回、週3回では尿毒素を除去しきれません。
除去しきれない尿毒素が長期間にわたると蓄積していき、様々な合併症を引き起こします。

日本の透析患者=高齢透析患者

日本の透析患者さんは、透析技術の向上により長生きできるようになりました。それにより、透析患者さんの高齢化が進んでいます。また生活習慣の欧米化によって糖尿病から腎不全になる方が多く、高齢での透析導入も珍しくありません。

日本の透析医療の特徴

  • 同一フロアで多くの患者さんを一度に治療する
  • 透析液の清浄化
  • 1回4時間、週3回、ベッドで寝て透析治療を受ける
  • 内シャントの使用率が高い

同一フロアに多くの患者さんが一度に治療をする

日本の透析医療は一つの部屋(透析室)で一度に多くの患者さんを治療します。
一つの部屋で多くの患者さんを治療するということは、多くの感染症のリスクを伴います。空気感染、飛沫感染、接触感染の危険があります。そして、透析治療では血液を扱うため血液を媒介とした感染の恐れもあります。

  • 空気感染:
    • 小さな病原体は空気中に浮いて広範囲に広がります。これらを吸入することで引き起こされる感染です。
      結核菌,麻疹ウイルス,水痘ウイルスなど
  • 飛沫感染:
    • 咳、くしゃみや会話によって飛んだつばなどに含まれる病原体を吸入することで引き起こされる感染です。
      インフルエンザウイルス,ムンプスウイルス,風疹ウイルスなど
  • 接触感染:
    • 皮膚や粘膜など接触や、手、ドアノブ、手すり、エレベーターのボタン等の表面を介しての接触で病原体が付着することによる感染のことです。
      黄色ブドウ球菌(MRSA),緑膿菌(MDRP),腸球菌(VRE),ノロウイルスなど
  • 血液媒介感染
    • 血液媒介感染は血液への直接接触や,針刺し事故などにより血液内に存在している病原体が体内に入る感染です。
      B型肝炎、C型肝炎、HIV感染症、梅毒

透析患者さんは免疫力が低下していることが多いため、感染にはとくに注意が必要です。

透析患者さんの免疫力低下の原因【免疫力低下には糖尿病が深く関わっています】

透析液清浄化

現在の透析治療において”透析液の清浄化”もとても重要です。1980年代より透析液の清浄化は議論されてきており、日本においては、国際標準化機構(ISO)よりも厳しい基準を設け透析液の清浄化に取り組んでおります。そのおかげで日本の透析液は世界一の水準となり、日本の透析患者さんは世界でもっとも長生きできるようになりました。

世界一の基準である日本の透析液清浄化の基礎の基礎

治療中ベッドで寝ている

日本では、透析中にベッドで横になっている患者さんを多く見かけると思います。おそよ93%の患者さんがベッドで治療を受けているのに対してヨーロッパでは53%、アメリカでは3%ほどになります。アメリカでは多くの患者さんがリクライニングチェアで透析治療を受けています。

日本では昔から、激しい運動が腎機能の低下に影響すると言われており、透析患者さんは安静にしていなければならいと言われておりました。現在は、腎臓リハビリテーションなど透析治療中に運動したりして透析患者さんの筋力向上に取り組む施設も増えてきました。
透析治療中もベッドで寝ているよりチェアで体を起こして負荷をかけたほうがいいとの報告もあります。しかし、日本は高齢者が多いためにベッドの治療を受けている患者さんが多くいます。

内シャント使用率が高い

現在、日本の透析患者さんでの91%の方が内シャントを作成し透析治療を行っております。内シャントのおかげで、透析治療に必要な血液量が安定して確保でき、また感染症も少ないくなりました。現在の透析医療の治療成績は内シャントのおかげかもしれません。日本の内シャント作製率91%、ヨーロッパ69%、アメリカ68%


透析開始時のカテーテル使用率日本10%、ヨーロッパ30~70%、アメリカ65%

    日本      ヨーロッパ     アメリカ   
内シャント使用率91%69%68%
透析開始時のカテーテル使用率10%30~70%65%

上の表からもわかるように日本では透析治療を始める前から内シャントを作成しております。

透析患者さんのシャント管理についてはこちらの記事をどうぞ

もしシャントについて、よくわからない方がいましたら、まずはこちらの記事をお読みください。【シャントの種類を簡単に説明します】

まとめ

日本の透析患者さんの生命予後は他国と比べて明らかに良好ですが、高齢の導入後早期死亡リスクは高く、透析導入が必ずしもQOLや身体的機能の改善にはつながらないことも多い。
透析技術の進歩により透析患者さんが長生きできるようなったが、それに伴って高齢化や合併症の頻度が多くなっている。そのにより透析室スタッフの負担が増大することが予想されます。

高齢化が進む日本の透析医療において大切なことは…

  • 医療者によって最良の治療が、患者さんにとって最良の治療とは限らない
  • 高齢の透析患者さんでは「治す」よりも「癒す」が大事になってくる。

今回の記事は以上となります。最後まで読んでいただきありがとうございます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました