どうして足がムズムズするの?
ムズムズした場合の治療方法は?
透析患者さんは、足がむずむずして動かさずにはいられなくなる病気になりやすいことをご存知ですか?この病気はレストレスレッグス症候群と呼ばれ、睡眠不足やQOLの低下などの影響を及ぼします。この記事では、レストレスレッグス症候群の原因や症状、診断方法や治療法などについて詳しくご紹介します。透析患者さんの足のケアに役立つ情報をお届けしますので、ぜひお読みください。
レストレスレッグ症候群(RLS)とは
レストレスレッグス症候群は、足がむずむずしたり、痛んだり、ひきつったりするような脚に不快な感覚が起こる病気です。このように脚に不快な感覚が現れて脚がじとしていられないことが特徴の疾患です。
夕方から夜にかけて症状が強まることが多いですが、仕事や生活の障害をきたすこともあり、QOLの低下や生命予後の低下の原因になります。この感覚は、脚を動かすと一時的に和らぎますが、動かさないと再び強くなります。
レストレスレッグス症候群の症状
- ほてる
- チリチリする
- ひきつる
- ムズムズする
- 足踏みをしたい
- 熱い
- 痛い
- 痛痒い
このような症状により、睡眠障害や疲労、気分の変調、うつ状態になったりQOLの低下につながります。
レストレスレッグス症候群の分類
レストレスレッグ症候群は「原発性レストレスレッグ症候群」と「続発性レストレスレッグ症候群」に分けられます。
原発性レストレスレッグ症候群
特定の原因がなく、遺伝的な要因が関係していると考えられるもの。症状は若年期から始まり、徐々に悪化していくことが多い。
原発性RLSの特徴
- 日本人の一般人口の2~5%に見られる
- 加齢ともに有病率が増加する
- 男女比は1:1.5で女性に多い
- 原発性の60%が家族歴を持つ
続発性レストレスレッグ症候群
他の病気や状態が原因となって起こるもの。症状は中年期以降に始まり、急激に悪化することが多い。原因としてはESRD(一番多い原因)、鉄欠乏、末梢神経障害、骨髄異常、パーキンソン病、抑うつ薬などが考えられます。
透析患者さんは、続発性レストレスレッグ症候群になる可能性が高いです。
レストレスレッグス症候群の診断基準(2014年IRLSSG)
- 脚を動かしたいという強い欲求がhかいな下肢の異常感覚に伴って、あるいは異常感覚が原因となって起きる
- その異常感覚が、安静にして、静かに横なったりしている状態に始まる、あるいは増強する。
- その異常感覚は運動によって改善する。
- その異常感覚が日中より夕方・夜間に増悪する。
- これらの特徴を持つ症状が、他の疾患・習慣的行動で説明できない。(筋肉痛、静脈うっ血、下肢浮腫、関節炎、こむら返り、特定の体位における不快感、フットタッピングなど類似疾患を鑑別除外)
上記の5項目を全て満たすことで、RLSの診断となります。
その他の特徴(診断の補助)
- 家族歴
- ドパミン作動薬による効果
- 睡眠時の周期性四肢運動が終夜睡眠ポリグラフ検査上、優位に多く出現
周期性四肢運動(PLM)とは、睡眠中に周期的に下肢が動くことで、不眠を訴えるがPLMを自覚しないことが多くあります。
レストレスレッグス症候群の原因
- 貧血:酸素不足によって神経が刺激されることがある。
- 鉄欠乏:鉄は神経伝達物質の合成に必要なミネラルである。鉄はドパミンの合成・受容体などに関与しており、鉄欠乏はドパミン作用低下状態になります。フェリチン濃度とRLSは負の相関関係があります。
- 腎不全:老廃物の蓄積によって神経が刺激されることがある。
- 透析中の不快感:透析中に足が動かせないことや、透析液の温度や成分によって神経が刺激されることがある。
- 薬物:抗うつ薬や抗ヒスタミン薬などの薬物が神経伝達物質のバランスを崩すことがある。
しかし、未だ不明な点が多くあります。
透析患者さんのレストレスレッグス症候群の特徴
透析患者さんのレストレスレッグス症候群は透析治療の前には約10%見られるが、透析後になると30%と著名に増加します。そのためレストレスレッグス症候群は透析治療の影響があると考えられます。
透析患者さんのレストレスレッグス症候群の頻度
透析患者さんのレストレスレッグス症候群の頻度には年代・地域・人種によっても異なります。
レストレスレッグス症候群の発生頻度に関する様々の文献をまとめると
- アメリカ(2004):32.2%
- サウジアラビア(2015):19.4%
- イラン(2016):55%
- トルコ(2018):16.8%
- 台湾(2019):12.6%
- 中国(2019):20.44%
- 日本(2006):20.6%
- 日本(2011):17.5%
- 日本(2015):14.9%
日本において、レストレスレッグス症候群の発症頻度は年々減少してきており、これは透析医療の進歩・薬剤の進歩が関与していると思われます。
透析患者さんのレストレスレッグス症候群のリスクファクター
- CRP高値
- アルコール
- HDL-C低値
- BMI高値
- 低Alb血症
- 女性
- 高齢
- 透析歴
レストレスレッグス症候群の透析患者さんは生命予後が悪い
レストレスレッグス症候群の患者さんではQOLの低下や睡眠障害が報告されており、交換神経系の賦活化を介した心血管疾患を発症し死亡リスクの上昇につながります。
レストレスレッグス症候群のある患者さんは、RLSのない患者さんに比べて全死亡率が1.79倍、心血管死亡率が2.79倍と高値であったと報告があります。
透析患者さんのレストレスレッグス症候群の治療
- 薬剤の見直し
- 血清鉄の適正化
- 透析量の適正化
- 薬剤治療
- ドパミンアンタゴニスト
- 抗てんかん薬
- 非薬物療法
透析患者さんのレストレスレッグス症候群は尿毒症物質によるものが多いともいますが、その他の原因も検索し治療を進めることが大切です。
薬剤の見直し(レストレスレッグス症候群の原因となる薬剤の中止)
ドパミン阻害薬(神経遮断薬)
ドパミン受容体拮抗作用のある制吐剤(メトクロプラミド)
抗うつ病薬(SSRI・三環系抗うつ剤)
抗ヒスタミン薬
これらの薬剤を内服している場合は中止を検討します。
血清鉄の適正化
鉄欠乏状態を把握し、必要に応じて鉄補充を行います。
透析量の適正化
明確な原因物質は不明だが、レストレスレッグス症候群は尿毒素と関連があると言われています。
- 透析効率を上げる
- HDF
- 長時間透析
- 頻回透析
α1MGの除去率40%以上、除去量200mg以上をRLS
の治療として効果があったとされています。
薬剤治療
レストレスレッグス症候群の薬剤治療にはドパミンアゴニストと抗てんかん薬があります。
ドパミンアゴニスト
ドパミン受容体作動薬ともいい、ドパミンに似た作用を持つ物質で脳内でドパミンと同じようにドパミン受容体に結合し、GABAの放出を抑制しムズムズ感を抑制します。
- プラミベキソール(保険適応)商品名:ビ・シフロール
- D2・D3受容体作動薬。腎排泄のため透析患者さんでは半減期が延長する。長期使用には注意が必要。クロナゼパムとの併用で効果あり。
- ロチゴチン(保険適応)商品名:ニュープロパッチ
- D2・D3受容体作動薬。肝臓代謝。貼布剤のため血中濃度は一定。
- ロピニロール(保険適応外)
- タリベキソール(保険適応外)
ドパミン作動薬の長期使用により、レストレスレッグス症候群の重症度が増強したり容易に症状が出現したり広がったりします(オーグメンテーション)
オーグメンテーションの症状が見られたら、薬剤の減量・中止をします。
抗てんかん薬
ベンゾジアゼピン受容体に結合し神経興奮を抑制します。
- クロナゼパム(保険適応外)商品名:リボトリール
- 副作用は少ないが、ふらつきや長期使用による依存性がある。RLS患者さんの睡眠の質は改善するがRLSの症状への効果は不十分。
- ガバペチン(保険適応外、透析患者さんは禁忌)
- 効果が高いが日本では禁忌
非薬剤療法
非薬物療法はレストレスレッグス症候群患者さんすべてに有用な治療法で、特に軽症例においては有効とされています。
- 睡眠衛生指導
- カフェイン・アルコール・ニコチンの中止
- 規則的な生活習慣
- 入浴時間や方法の改善
- 適度な運動、下肢のマッサージ
- 体重の管理
- 健康的な食事と十分な運動
レストレスレッグス症候群の治療方法と治療効果を検討した結果では、もっとも効果があったものはガバペチンの内服でした。副作用が少なく受容性の高い治療は運動とドパミンアゴニストの併用でした。
まとめ
- 透析患者さんのレストレスレッグス症候群は一般人口より多く10~15%に見られ、症状が重い。
- レストレスレッグス症候群の診断と重症度判定をする。
- 薬剤性、鉄欠乏レストレスレッグス症候群を除外する。
- 治療は透析効率を上げる。
- 薬剤治療の第一選択はロチゴチン、第二選択はプラミペキソールとなり、過剰投与によるオーグメンテーションに注意が必要。
今回の記事は以上となります。レストレスレッグ症候群は、透析患者さんにとって大きな悩みの一つです。症状が重くなると、睡眠の質が低下し、日常生活にも影響が出ることがあります。しかし、レストレスレッグ症候群は、適切な診断と治療によって、症状を軽減することができます。また、日常生活で気をつけることや、足のケアをすることで、予防や改善にも効果があります。レストレスレッグ症候群に悩んでいる方は、早めに医師に相談してみてください。レストレスレッグ症候群について、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございます。
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