透析患者さんは、血液中のカリウムが高くなりすぎると、不整脈や心不全などの重篤な合併症を引き起こす危険性があります。腎機能が低下すると体内のカリウムが排泄出来なくなり血液中のカリウムが高くなりやすくなります。日本で透析治療を受けている患者は32.5万人と言われており、そのうち44%の方が糖尿病が原因で透析を始めています。糖尿病は高カリウム血症の大きな要因となるため、糖尿病の透析患者さんは食事でカリウムの摂取量を特に注意する必要があります。しかし、カリウムは野菜や果物など、健康に良い食品に多く含まれています。では、透析患者さんはどのようにバランスの取れた食事を摂ることができるのでしょうか?この記事では、カリウムの働きと危険性、食事で気をつけるべきポイントと工夫、おすすめメニューを紹介します。
今回の記事はこんな人におすすめ!
- これから透析が必要と言われた方
- 透析患者さんのご家族の方
- 新人看護師さん
カリウムとは何か、体内でどのような働きをする?
カリウムは、体の中にあるミネラルの一種です。カリウムは、細胞内外の電解質のバランスを調節することで、膜電位を形成し、神経の興奮・伝達や筋収縮のメカニズムに関与しています。 また、カリウムは酸・塩基平衡の維持や細胞内の酵素反応の調節などの働きもしています。 カリウムは主に小腸で吸収され、大部分は腎臓で尿として排泄されます。 カリウムの排泄量は、腎臓での再吸収の調節によって決まります。 カリウムはナトリウムと相互作用し、ナトリウムの再吸収を抑制して尿中への排泄を促進します。 これにより、血液中のナトリウム濃度や血圧が下がります。
カリウムは、体の水分の量や血圧を調整したり、心臓や筋肉を動かしたりするのに必要なミネラルです。
カリウムは、肉や野菜などの食べ物にたくさん入っています。普通は、食べ物から十分なカリウムがとれますが、吐いたり下痢をしたりするとカリウムが足りなくなることがあります。カリウムが足りないと、だるくなったり筋肉が弱くなったりします。
透析患者がカリウムを制限する理由と目安
腎臓の機能が低下すると、カリウムを尿から排出することができず、血液中にカリウムが溜まってしまいます。
血液中のカリウム濃度が高くなると、高カリウム血症という状態になります。高カリウム血症は、胃腸や筋肉、神経に不快な症状を引き起こすだけでなく、心臓の不整脈や心停止の危険性も高まります。
逆に、カリウムが不足すると、低カリウム血症という状態になります。低カリウム血症は、筋力の低下や消化器官の障害などを引き起こします。
透析患者さんのカリウムの目標値
したがって、透析患者の方は、血液中のカリウム濃度を正常範囲(3.5〜5.5mEq/L)に保つために、食事から摂取するカリウム量を適切に調節する必要があります。
総死亡、CVDの発症を抑制するためにCKD患者の血清K値を管理するよう提案する。具体的な管理目標値としては、血清K値4.0mEq/L以上、5.5mEq/L未満でリスクが低下する。
エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン 2018
慢性腎臓病におけるカリウムの摂取量
一般的には、腎臓病の進行度(CKDステージ)によって、カリウム摂取量の目安が異なります。
- ステージ1〜3a:制限なし
- ステージ3b:2000mg/日以下
- ステージ4〜5:1500mg/日以下
ただし、この目安は個人差がありますので、主治医や管理栄養士と相談しながら決めてください。
腹膜透析患者さんの場合は、カリウムについては特に制限はありません。
カリウムが高くなるとどうなるか、症状と危険性
透析患者さんは、カリウムの摂取量に注意しなければなりません。カリウムは体内で重要な役割を果たしていますが、腎臓の働きが低下するとカリウムが排出されずに血液中に蓄積されてしまいます。これが高カリウム血症と呼ばれる状態です。
高カリウム血症になると、筋力の低下や不整脈などの症状が現れることがあります。特に不整脈は心停止や突然死の原因になることもあるため、非常に危険です。高カリウム血症の診断は採血検査で行われますが、自覚症状がない場合もあるため、定期的な検査が必要です。
食事で気をつけるべきポイント
カリウムが多い食品と少ない食品の例
カリウムを減らす調理法や工夫
カリウムは水に溶けやすい性質があるので、水にさらしたり、ゆでこぼしたりすることでカリウムを減らすことができます。この方法でカリウムが約20%減少します。
具体的な方法は以下の通りです。
- 野菜や芋類は細かく切ってから水に5分程度さらす。
- 野菜や芋類は多めの水で茹でこぼす。茹で時間は10分以上が目安。
- 煮物や炒め物などの調理法では、煮汁や油をしっかり切る。
- 麺類は茹で上がったら一度水にさらしてから食べる。
注意点として、電子レンジによる下ごしらえではカリウムは減りません。また、カリウムの少ない食品でも量によっては摂取量が増えてしまうので注意が必要です。
栄養バランスや水分摂取量にも注意すること
日本腎臓学会のガイドラインでは、血清カリウム値が5.5mEq/L以下になるように、1日のカリウム摂取量を1500mg以下に制限することが推奨されています。
しかし、カリウム制限だけではなく、他の栄養素のバランスも考慮する必要があります。特に、蛋白質や塩分の摂取量も適切に調節することが重要です。蛋白質は、腎臓への負担を減らすために摂取量を制限しますが、摂りすぎると窒素代謝物が増えて腎機能障害を進行させる可能性があります。一方で、摂りすぎないようにするとカロリー不足になる恐れがあるため、糖質や脂質でカロリーを補います。塩分は、体液量の調節や血圧のコントロールのために摂取量を制限しますが、摂りすぎるとむくみや高血圧を引き起こす可能性があります。
具体的な食事療法は、個人の病状や腎機能によって異なりますので、主治医や栄養士と相談しながら行ってください。また、食事療法の効果は、日々の体調や体重の変動や毎月の検査結果などで評価してください。食事療法は無理のない範囲で継続することが大切です。
上手に活用してカリウム制限!!低カリウム食品や宅配サービス
低カリウム野菜
低カリウム野菜とは、カリウムの含有量が通常の野菜よりも50%以上少ない野菜のことです。野菜にはカリウム以外にもビタミンや食物繊維などの栄養素が豊富に含まれており、生で食べることでさらに健康効果が高まります。そこで、低カリウム野菜は、腎臓病の人でも生で食べられるように開発された画期的な商品です。
低カリウム野菜は、特殊な栽培方法や選別方法によってカリウムの含有量を減らしています。例えば、レタスは通常100gあたり200mg程度のカリウムが含まれていますが、低カリウムレタスは100gあたり43mg程度に抑えられています。また、小松菜や水菜なども低カリウム化されています。低カリウム野菜は、食品分析開発センターSUNATECなどの検査機関で精密検査を受けており、安全性や品質にも信頼があります。
透析食宅配サービス
透析患者さんは、カリウムやリンなどのミネラルや水分の摂取量を制限する必要があります。そのため、食事の管理が大変ですよね。そんなときに便利なのが、透析食の宅配サービスです。透析食の宅配サービスは、管理栄養士や医師の監修のもと、透析患者さんに適した栄養バランスや塩分量に調整された食品を自宅に届けてくれるサービスです。
- まごころケア食:安さと送料無料が魅力的な宅配サービスです。7食・14食・21食セットがあり、それぞれ単品購入と定期購入もできます。1食あたりに含まれる栄養素は、カロリー300kcal以上、塩分2.0g以下、たんぱく質10g以下、カリウム500mg以下、リン200mg以下です。
- 食宅便:日清医療食品が行っている宅配サービスです。7食セットがあり、A~Gセットまでメニューが分かります。定期便にした場合は送料が半額になります。1食あたりに含まれる栄養素は、カロリー598~622kcal、塩分2.0g以下、たんぱく質13g程度、カリウム500mg以下、リン270mg以下です。
- スギサポdeli:スギ薬局が行っている宅配サービスです。7食セットが5種類あり、それぞれメニューも分かります。定期コースだと5%オフになります。1食あたりに含まれる栄養素は、カロリー300~400kcal程度、塩分2.0g以下、たんぱく質15g以下、カリウム600mg以下、リン250mg以下です。
これらの宅配サービスは、透析患者さんに適した食事を提供してくれるだけでなく、おいしくてバラエティ豊かなメニューも揃っています。また、冷凍で届くので保存も簡単です。透析患者さんが活用すると便利な宅配食品だと思います。
まとめ
今回は、透析患者さんのカリウム制限について、注意点や対策を紹介しました。カリウムは、食事で摂取する量によって血中濃度が変わります。食事でカリウムを制限することは、透析患者さんの健康や生活の質を守るためにとても大切です。食品成分表や栄養表示を見てカリウムの含有量を確認したり、カリウムが多い食品は量を少なくしたり水にさらしたりしてカリウムを減らしたりすることで、カリウム制限を守ることができます。また、カリウムが少ない食品を多めに使ってバランスの良い食事を作ることも大切です。カリウム制限は難しく感じるかもしれませんが、工夫次第でおいしく楽しく食べることができます。ぜひ参考にしてみてください。
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