シャント管理をしないとどうなるの?
透析室スタッフ・患者さんは何をすればいいの?
透析患者さんにとってシャントは非常に重要なものです。シャント管理を行うことで「透析患者さんのシャントが長持ちする」かもしれません。また「シャントの異常を早期に発見してシャントトラブルのリスクを減らせる」かもしれません。
シャントのトラブルで一番多いものが狭窄や閉塞です。このような異常があるとPTAと言って狭くなった血管を内側から風船で広げる手術が必要になります。狭窄の発見が早ければこのような手術のリスクを減らせると思います。
シャントトラブルに関する記事はこちら
私は透析技士として今まで多くの患者さんのシャントを診てきました。また臨床検査技師さんと一緒になってシャント管理に励んでまいりました。私の詳しいご紹介はこちら。
この記事ではシャント管理に基本をご説明します。この記事を読んで明日から患者さんのシャントを注意深く見てみてください。
シャント管理の重要性、シャント管理をしないとどうなるか?
透析患者さんにとってシャントは透析治療に欠かせないものです。シャントは患者さんと透析装置をつなぐ役目をしており、シャントがうまく機能しないと十分な透析治療ができません。
平成30年にPTAを行った回数は全国で12000例以上になります。これは単純計算で約30人に一人の透析患者さんがPTAをやったことになります。透析患者さんの高齢化や糖尿病患者の増加が原因でPTA回数は年々増加しています。
完全にシャントがつまってから(閉塞してから)PTAをやろうと思ってもうまく血管が広がらなかったり・ガイドワイヤーが通らなかったり・血管を広げるときに痛みが強かったり、患者さんへの負担が大きくなります。病気は早期発見早期治療が基本ですが、PTAに関しても同じことが言えます。狭窄部位を早期に発見して狭窄部分が悪化する前に治療してあげることが患者さんの負担(痛み)の軽減につながります。
透析室スタッフが行うシャント管理
触診・視診・聴診
シャント管理の基本は、見て(視診)・聞いて(聴診)・触る(視診)になります。
- 見る(視診)
シャントの状態を確認、傷や感染の兆候はないか、皮膚の色(赤みや暗赤色(チアノーゼ)がないか。血管瘤が大きくなっていないか。見た目で狭窄部位のめぼしをつけます。 - 聞く(聴診)
シャント音を聞きます。正常なシャントはザーザーと勢いよく流れている音がしますがシャント吻合部より中枢で狭窄部位があるとシャント音はザッザッやドンドンと伸びのない拍動音に変わります。また狭窄部分だとヒューヒューと高音がなります。 - 触る(触診)
血管を実際に触ってみます。血管を触って血管の張りを確認します。狭窄部位があると狭窄部位で血液の流れがとだえる為、狭窄部位よりも末梢の血管が張ります。
シャント音を聞くのに聴診器が必要です。透析室スタッフに聴診器は必須ですので、ぜひこの機会に聴診器を見直してみるのはいかがでしょうか?
聴診器の基礎から学びたい人はこちら
聴診器を新しく買い換えたいなっと考えている方はこちら。
透析患者さん自身が行うシャント管理の指導
シャントのトラブルは透析室で起こるより、患者さんの自宅で起こることが多いです。透析室に来院して透析室スタッフがシャントの異常を見つけることが大半です。そのため常日頃から患者さん自身にシャントを気にかけるように指導することシャントトラブルの早期発見に重要です。
シャントの機能的評価
シャントエコー
超音波診断装置(エコー)を使って、シャントの流れている量(Follow)や血管の状態を検査します。シャントに流れている血液の量が減っていれば、その原因を調べその後の治療の考えます。
現在は、超音波診断装置もコンパクトでベッドサイドで簡単に操作できるものもあります。
再循環率の測定
シャントトラブルがあると、一見透析治療がうまくいっているように見えても、実は体に戻した血液をそのまま脱血して透析装置に送っていることがあります。その際に再循環率を測定し、どの程度体に戻した血液をそのまま透析装置に送ってしまっているのかを調べます。
方法としてHD‐02という専用の装置を使うやり方と、ダイアライザー前後の尿素窒素の値で測定する方法があります。
患者さんの透析後の採血結果が異常に低値だったり、透析前の採血結果が徐々に上昇している場合は、再循環を疑ってみてください。
患者さん自身が行うシャント管理
透析患者さんが行うシャント管理は、シャント肢を清潔に保つこと、シャントの流れをふさがないようにすることです。
- シャント肢を清潔に保つ(感染症の予防)
シャント肢の皮膚トラブルも感染の原因になります。痒みから傷を作ることもありますのでスキンケアなども大切です。 - シャントの流れをふさがない(狭窄・閉塞の予防)
シャント側の血管をつぶさないように、重たいものをぶら下げない。袖のキツイ服を着ない - 患者さん自身でもシャントの音を聞く、スリルを確認する
毎日患者さん自身でシャント音を聞くことで音の変化からシャントトラブルの早期発見につながります。
一番大切なことは、患者さん自身がご自身のシャントを意識することだと思います。今までより少し意識してシャント肢を見ることでシャントのトラブルは減ると思います。
シャントを清潔に保つことは感染管理においても大変重要です。
透析患者さんの感染症・免疫力についての記事はこちら
最後に
この記事を読んで、明日から患者さんのシャントを注意深く見てみてください。
この記事を読んで、イマイチ乗り気じゃない人は、ぜひ聴診器を新しいものに変えてみてください。有名な聴診器だとリットマンなどが有名です。価格は13000円前後だと思います。聴診器を変えるとシャント音の聞こえ方が変わります。聞こえ方が変わるとシャントの流れ方や狭窄などシャントの状態が感じ取りやすくなります。そうするとあなた自身のシャントに対する向き合い方自信にもつながると思います。
今回の記事は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございます。
コメント
[…] 透析患者さんにとってシャントは非常に重要なものです。シャント管理を行いシャントトラブルを減らすことは「透析患者さんのシャントが長持ちする」につながります。 […]
[…] […]
[…] […]
[…] […]
[…] […]
[…] […]
[…] […]