どれがいいの?透析液のカルシウム濃度!!【透析液のカルシウム濃度から透析患者さんのカルシウム管理を考えます】

透析
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透析液の種類って色々あるけど何が違うの?

現在市販されている透析液は数種類あります。それぞれカルシウム濃度が違い、カルシウム濃度は、2.5mEq/Lか2.75mEq/Lか3.0mEq/Lかに分けられます。そして2020年に新たにカルシウム濃度2.6mEq/Lの透析液が発売されました。
この記事では、透析液のカルシウム濃度から透析患者さんの適切なカルシウム管理をご説明します。

透析患者さんにとって透析液のカルシム濃度の重要性

透析患者さんにおいて、慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)は生命予後にも関与する重要な合併症の一つです。CKD-MBDの管理ではリン(P)、カルシウム(Ca)、副甲状腺ホルモン(PTH)を適正に保つことが大切で、第一にリンの管理が大切になり、次にカルシウムの管理が大切になります。

透析患者さんのCKD-MBDに関する記事はこちら

透析患者さんのリンの管理に関する記事はこちら


透析患者さんのCa濃度には毎回の治療に使用される透析液のCa濃度が大きな影響を与える因子です。
現在、日本で使用されている透析液のCa濃度は2.5mEq/L~3.0mEq/Lですが、合併症の有無や食事内容、投与している薬剤などを考慮して透析液を選択することが重要で、それがCKD-MBDの発症予防や進行抑制につながります。

現在、日本で使用されている透析液のCa濃度

現在、日本で使用できる透析液のCa濃度は2.5mEq/L・2.75mEq/L・3.0mEq/L・3.5mEq/Lがあります。
1990年代から2.5mEq/Lと3.0mEq/Lが主流で使われてきました。2009年の統計調査では2.5mEq/Lが34.6~35.6%、3.0mEq/Lが49.0~49.3%、2.75mEq/Lが3.5~3.9%でした。
2011年に2.75mEq/Lの透析液が発売されてからは使用する施設が増加し2014年では5割弱まで増えています。

ドイリー
ドイリー

アルカリ化剤にクエン酸を使用している無酢酸透析液では、①クエン酸によるCaのキレート作用、②重炭酸濃度が高いためアルカリ化によるイオン化Caの低下があるため、実際のカルシウム濃度は理論値より若干低くなります(カーボスターで実際は2.75~2.85mEq/Lと考えられています)。

透析液Ca濃度とCaバランス

日本のガイドラインでは透析液のCa濃度に関して「2.5mEq/Lと3.0mEq/Lのどちらを選択すべきかについては明らかではない」としています。

透析液のCa濃度が3.5mEq/Lを持続使用すると冠動脈疾患による死亡率が5倍になる
透析液のCa濃度が2.5mEq/L未満を使用すると心臓突然死のリスクが上昇する

これらの事をふまえると、透析液のCa濃度は高すぎても低すぎても良くないっと言うことになります。

透析液Ca濃度と透析中の総Caの移動量の関係

  • 透析液Ca濃度2.5mEq/L→負のバランス(体内からCaが除去される)
  • 透析液Ca濃度3.0mEq/L→正のバランス(体内にCaが負荷される)

透析液Ca濃度が2.5mEq/L(負のバランス、体内からCaが除去される)場合

血清Caが低下して、PTHが上昇する。
Ca過剰を回避できる。
Ca含有P吸着薬やビタミンD製剤が使用しやすい。
透析中の血圧が不安定になりやすい。

ドイリー
ドイリー

古くからP吸着薬で使用されている炭酸CaはPを下げる効果もありますが、それと同時にCaを上げる作用もあります。またビタミンD製剤も腸管でのCaの吸収を促進するため血清Ca値が上がります。

透析液Ca濃度が3.0mEq/L(正のバランス、体内にCaが負荷される)場合

血清Caが上昇しPTHが低下し管理がしやすい。
しかし、高Ca血症になりやすく血管石灰化の原因になる。
血圧が安定する。
Ca含有P吸着薬やビタミンD製剤の使用には注意が必要。

透析液Ca濃度が2.75mEq/Lの場合

2.5mEq/Lでは除去される、3.0mEq/Lでは負荷されてします。よってその中間である2.75mEq/LだったらCaの移動がゼロ付近であると考えられている透析液です。

Ca濃度が2.75mEq/Lの透析液では、イオン化Ca濃度の変化が少なくPTHの変動が少ないと言われてます。

ドイリー
ドイリー

2.5mEq/Lでは負のバランス、3.0mEq/Lで正のバランスと言いましたが、実際は透析患者さんの血清Ca濃度によってこのバランスは変わることを忘れてはいけません。透析患者さんのCa濃度が透析液よりも高ければCaが除去されますし、逆に低ければ負荷されます。

透析液の選択

透析導入時は低Ca血症のことが多いため、3.0mEq/Lを使用して血清Ca濃度を維持することも必要かと思います。
慢性期においては、ビタミンD製剤を積極的に使用する場合などは、2.5mEq/Lが使いやすいと思います。

しかし、日本の透析室ではセントラル透析液供給システム(CDDS)が一般的なため、患者さん個別に透析液のCa濃度を変更することが難しくあります。その為、2.5mEq/Lと3.0mEq/Lの中間である2.75mEq/Lの透析液が使用しやすく広く使われている理由だと思います。

まとめ

近年、透析患者さんのCa濃度は高すぎない方が良いと言う文献多く発表されております。また、KDIGO2017ではと”高カルシウム血症は避けるべきとされており、カルシウムの下限値については削除されています。その理由としては、①成人CKD患者ではカルシウム負荷が有害である、②シナカルセト治療時の低カルシウムは有害でない、があります。
このようにな理由から”無症候性の軽度の低カルシウムを容認”したかたちとなっています。

2020年に新たに発売されたキンダリー5号のCa濃度は2.6mEq/Lとなっており、またMg濃度が1.2mg/Lとなっており、血管石灰化抑制効果が期待できると思います。

透析液のCa濃度により透析患者さんのCa濃度は変化します。しかし、透析患者さんのCa濃度に影響を与えるのは透析液だけではなく、P吸着薬・ビタミンD製剤・Ca感知受容体作動薬など複数あります。さらには透析患者さんの合併症や食事内容にも影響を受けます。
そのため透析患者さんの状態を評価して、CDDSシステムであることを考慮して透析液を選択する必要があると思います。

今回の記事は以上となります。最後まで読んでいただきありがとうございます。

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