臨床工学技士の皆さん、臨床工学技士の業務範囲が追加されたことをご存知ですか?
2021年5月28日、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律 (令和3年法律第49号)」が公布されました。これに伴い臨床工学技士の業務が拡大されました。しかし、新たな業務を行うには、必要な知識や技能を習得する必要があります。そこで、厚生労働大臣が指定する告示研修が開催されています。
告示研修とは、臨床工学技士が新たに行える業務に必要な知識・技能を習得するための研修です。告示研修を受講することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか?また、実技研修では、どのような内容を学ぶことができるのでしょうか?そして、実技研修を受講する際に注意すべき点は何でしょうか?この記事では、これらの疑問に答えていきます。臨床工学技士の業務拡大に伴う告示研修について、詳しく解説していきますので、ぜひ最後までお読みください。
今回の記事はこのような方におススメです!
- 臨床工学技士の免許を持っているが、告示研修について詳しく知らない人
- 告示研修を受講しようと考えているが、実技研修の内容や注意点に不安がある人
- 告示研修を受講することで、臨床工学技士としてのスキルやキャリアにどんなメリットがあるか知りたい人
臨床工学技士の業務範囲が追加された背景や目的
臨床工学技士の業務範囲が拡大された背景には、医師の働き方改革・各職種の専門性の活用・地域ごとの医療体制の確保があります。医師の過重な労働や健康問題、医師不足や偏在などの課題に対応するために、医師が行っていた一部の医療行為を他の職種に分担することで、医師の負担を軽減し、効率的かつ適切な医療を提供することを目指しています。
臨床工学技士の専門性を活かして動脈表在化穿刺や内視鏡手術のカメラ操作など、患者さんへの直接的なケアも含めて責任ある業務が拡大されました。これにより、臨床工学技士は新たなスキルや知識を身につけることができるとともに、医療現場での役割や責任も高まります。
告示研修の必要性は?
医師が行っていた一部の医療行為を臨床工学技士に分担することで、新たに研修を受ける必要があります。
臨床工学技士の業務拡大で行えるようなる業務
- 血液浄化装置の穿刺針その他の先端部の表在化された動脈または表在静脈への接続および除去(動脈表在化への穿刺)
- 手術室や集中治療室で生命維持管理装置を用いた治療における静脈路への輸液ポンプまたはシリンジポンプの接続、薬剤を投与するための当該輸液ポンプまたは当該シリンジポンプの操作並びに当該薬剤の投与が終了した後の抜針及び止血(静脈路からの薬液投与)
- 生命維持管理装置を用いた心臓または血管に係るカテーテル治療における身体に電気的刺激を負荷するための装置の操作(⼼・⾎管カテの電気的負荷)
- 手術室で生命維持管理装置を用いた鏡視下手術における体内に挿入されている内視鏡用ビデオカメラの保持及び手術野に対する視野を確保するための当該内視鏡用ビデオカメラの操作(鏡視下手術のカメラ保持・操作)
業務拡大することでのメリット
- 医師や看護師の業務負担を軽減し、医師不足や医師偏在などの課題に対応する
- 医師や看護師と連携し、患者さんへの直接的なケアを提供する
- 自らの専門性や技能を活かし、医療安全や医療品質の向上に貢献する
- 担当できる業務が増えてやりがいが増す
告示研修の内容
告示研修はオンデマンドで行う基礎研修と、対面で行う実技研修があります。
基礎研修
基礎研修は、オンデマンド型eラーニングにより、以下の5つの分野について基礎的な知識を修得するものです。
- 法改正と業務範囲追加
- 静脈路の確保、静脈路の抜針・止血、静脈路からの薬液投与
- 動脈表在化の穿刺
- 心・血管カテの電気的負荷
- 鏡視下手術のカメラ保持・操作、手術における清潔操作
各分野には、講義と実技があり、合計で約20時間かかります。
eラーニングを視聴後には簡単な確認テストを行い合格したら視聴完了となります。
実技研修
実技研修は、対面式にて、2人1組で模擬医療機器等を用いて実技を修得するものです。以下の5つの分野について実技研修が行われます。
- 静脈路の確保、静脈路の抜針・止血、静脈路からの薬液投与
- 動脈表在化の穿刺
- 心・血管カテの電気的負荷
- 鏡視下手術のカメラ保持・操作
- 手術における清潔操作
実技研修は2日間かかり、各日程には120人程度の定員があります。
実技研修の日程・場所・受講方法
臨床工学技士の告示研修の実技研修を受講する際に注意すべき点をまとめて説明します。実技研修を受けるには基礎研修を受ける必要があります。
①告示研修の申し込み~基礎研修受講
- 告示研修申し込みサイトからアカウントの登録(https://reg.ibmd.jp/jace-kokujikenshu/)
- アカウント登録後、申し込みサイトから受講料の支払い(会員38000円、非会員60000円)
- 支払いが完了すると基礎研修を受講することができます。
研修テキストは専用サイトから購入とダウンロードできます。
購入する場合は有料で3000円の費用がかかりますが、ダウンロードの場合は無料です。全部で1400ページほどになるテキストですのでプリントアウトすると大量になるのでPDFで閲覧するのが便利だと思います。
基礎研修を視聴し確認テストが完了すると実技研修の申し込みが出来るようになります。
②実技研修申し込み~実技研修当日
- 実技研修申し込み欄から実技研修場所を選びます。
- ご希望の受講場所の申し込みが出来たら受講票をプリントアウトし、当日忘れずに持って行ってください。
- 実技研修当日は、軽装で大丈夫です。しかし、疑似血液などを使いますので汚れても良い服装で動きやすい方がいいと思います(手指消毒やガウンテクニックの実技があるので)。
- 二日間の実技研修が終了すると専用サイトから履修証明書がダウンロードできるようになります。また、後日「修了証」が郵送で届きます。
実技研修当日に欠席した場合、再度実技研修の申し込みが必要になりますが、その場合は再予約(30000円)が必要になりますので、ご注意ください。
告示研修を終えて
私は2022年に告示研修を修了しました。
普段は透析専門のクリニックで勤務していますので、内視鏡や心カテは全くわかりませんでしたが、講師は実臨床で現役で業務を行っている方々だったので、とても分かりやすく教えていただきました。
現在、受講者修了者数は、2023年5月末時点で10,121人です。2027年までに修了目標が28,000人なので、まだ受講を終えられていない方のお役に立てれば幸いです。
最後に
これで、臨床工学技士の業務拡大に伴う告示研修についての解説は終わりです。告示研修を受講することで、臨床工学技士は新しい挑戦や成長の機会を得ることができます。また、業務拡大によって、臨床工学技士は医療現場でより重要な存在になることができます。告示研修は、臨床工学技士の可能性を広げるチャンスです。ぜひ、このチャンスを逃さないでください。臨床工学技士の業務拡大が皆さんのキャリアアップになることを心から応援しています。
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